wild poker~ワイルドポーカー~
……分からなかった。
コイツの言葉の意味も、コイツの行動の意味も……今の俺には何一つとして理解出来ない。
でも……何故だろうか。
不愉快でムカつく上に、下劣で非常識な言動をするコイツを、俺は何故か《嫌い》ではなかった。
そう……ずっと思っていた。
コイツが吐く残酷で冷たい言葉は、どれも《間違って》なんていないと。
そうだ……今になって、よく分かる。
綺麗事や偽善を纏った上辺だけの優しさを除いた、生きる為に最善の選択。
それをいつもコイツは話していた気がする。
「……お前……何なの?お前は……俺にどうして欲しいんだよ」
その擦れた俺の問いに、コウモリはニヤリと得意のムカつく笑みを浮かべて見せた。
「……生き……残れ…よ。それで……俺に……見せて…くれ。……アイツの……セリルの…望ん…だ……《結末》…を。《悪夢》の覚める……その瞬間を」
コウモリがそう言って悲しそうに笑い、そして静かに目を閉じたその時、ザリッと砂の擦れる音が後ろから聞こえた。
それと共に《誰か》の気配を感じ、ゴクリと息を呑む。
それから心を決め、思い切って後ろを振り返れば、そこには……灰色の布を纏った男の姿が見えた。