wild poker~ワイルドポーカー~

「……ジョーカー」

霧島さんは震える声で呟き、怯える様に一歩あとずさる。

「……どうして……ここに」

そう呟き、手にしたコウモリをそっと胸に抱く。

するとジョーカーは何も読めない冷たい瞳で俺達を見つめた後、一歩こちらに向かって歩いてきた。

「来るな!!」

そんな叫びが何の意味も無いと分かっていたが、つい、俺の口からその言葉が洩れ出した。

するとジョーカーは歩く足を止め、静かに俺を見つめる。

「死にはしない」

「……は?」

突然話し出したジョーカーのその言葉に、思わず気の抜けた声を洩らす。

「余計な事を話し過ぎて、クソガキから罰を受けただけだ。暫くすれば元に戻る。それに最後を見届けると約束したからには、簡単に死なれては困る」

そう言ってジョーカーは俺の胸に抱いたコウモリを見つめ、小さく息を吐いた。

それから暫く……静寂が続く。

しかしその静寂を破ったのは、ジョーカーだった。
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