wild poker~ワイルドポーカー~
「わ、分かりません。何が……」
困惑する俺の言葉に、須藤さんは困った様に笑って、それからそっと俺の胸へと向かって血だらけの指を伸ばす。
その指は俺のTシャツの上をそっと撫で、俺の胸に真っ赤な血で、ハートのマークを描いた。
それからその後に、彼の指が一つのアルファベットを描く。
「……ハートの……クイーン?」
俺の胸に描かれた赤い《Q》の文字に、そっと手を触れたまま小さく呟く。
すると須藤さんはそれに弱々しい笑みを浮かべ、そして上げていた手を下ろした。
「須藤さん!!」
その俺の叫びに彼は応える様に力無く笑うと、それからそっと、何かを差し出す。
それは……カードだった。
《ダイヤの6とJ》《クラブの8》《ハートの9》……そして《ダイヤのK》
しかしそれを見つめたまま、力無く首を横に振った。
その彼の差し出した《命のカード》が、彼との別れを告げている様な気がしたから。
「……いらない。俺はこんなカード……欲しくないよ!!」
そう声を荒げるが、彼は困った様に笑って俺の手に無理やりカードを持たせると、それから静かに目を閉じる。
「須藤さん!!」
そう声を上げ彼を呼ぶが、それに彼が答える事は、もう……なかった。