wild poker~ワイルドポーカー~
「……おっと、俺様の《出番》だぜ!!」
懐かしくすら感じるその声と同時に、霧島さんの胸に抱かれていたコウモリが飛び立った。
「お前っ……」
「振り返んじゃねェ!!そのままゲームテーブルを目指せ!!」
俺の呼び掛けを遮り、コウモリはそう叫ぶと、そのまま黒咲さんへと向かって飛んで行く。
「……なっ!」
後ろから彼女の短い声が聞こえ、しかしそれを無視して走った。
霧島さんの手を引き、そのままの勢いでビルの角を曲がると同時に、ドンと激しい破裂音が響く。
それは俺に残酷な光景を脳裏に浮かばせ、ギリッと音が鳴るほどに歯を食い縛る。
……振り返るな。
そんなアイツの声が聞こえる気がした。
それに従う様に震える彼女の手を引いたまま、全力疾走でネオンの煌めく街並みを走り抜ける。
真っ直ぐに……《ゲームテーブル》を目指して。