wild poker~ワイルドポーカー~
それは……《カジノ》だった。
大きなルーレットと、トランプの看板が、まるで俺達を誘う様にピカピカと光っている。
そのまま霧島さんの手を引きカジノの中へと入れば、そこは何も無い灰色の空間だった。
テレビや映画で知っているカジノの光景はそこにはなく、コンクリートで囲まれた灰色の空間のその中央に、ポツンと置かれている《ゲームテーブル》を見つける。
息を切らせ走り寄れば、それは緑色のゲームテーブルだった。
それこそカジノに置かれている様な、そんな至って普通のテーブルに見える。
しかし……考えている暇はなかった。
手にしていたカードを五枚、テーブルの上に並べる。
それは《ハートの6、8》《クラブの6、8》《ダイヤの6》の五枚。
すると緑のテーブルに、《役をつくる》のボタンが浮かび上がった。
「フルハウスの報酬は《好きなプレイヤーを一人殺せる》」
テーブルに浮かぶ《役をつくる》のボタンを見つめたまま、小さく呟いたその瞬間、誰かの足音が聞こえた。
それはコツコツと靴底でコンクリートの地面を叩きながら、静かにこちらへと近付いてくる。
そしてこの空間への入口に、一つの人影が見えた。
それは逆光で黒い闇を纏い、しかし俺達はそれが誰なのかすでに理解していた。