wild poker~ワイルドポーカー~
「ねぇ……教えて。《私》が《彼女》を殺してはいけないその《理由》を」
黒咲さんの甘く優しい囁きに、ドクドクと心臓が鼓動を速める。
しかし俺の口から彼女の問いの答えが紡がれる事は無かった。
妖しく笑った黒咲さんの指が、ゆっくりと引き金に掛かる。
その次の瞬間、俺のテーブルの上に浮かんだままの手の下に、白い小さな手が伸ばされる。
その傷だらけの手は《役をつくる》ボタンの上でほんの一瞬揺らぎ、しかしそのすぐ後にその指がボタンを押した。
それと共にピッと短い電子音が聞こえ、テーブルが眩しく光り出す。
『おめでとうございます。【フルハウス】が完成しました。よって報酬が与えられます』
その機械的な音声が聞こえ、霧島さんは真っ直ぐに黒咲さんを見つめたまま、口を開く。
「私だって……私だって死ぬわけにはいかない。お父さんも、お母さんも……きっと心配してる。だから私は絶対に帰らなきゃいけない。たとえ……貴女を殺す事になったとしても」
擦れ、震え、しかし確かな決意を纏った霧島さんのその言葉に、黒咲さんは銃を構えたまま小さく笑みを浮かべた。