wild poker~ワイルドポーカー~
誓い 【side‐A】
あれから約束のビルへと向かい藤谷を待ったが、それからいくら待っても、藤谷が姿を現す事は無かった。
刻々と虚しい時だけが過ぎて行き、薄暗い部屋の中、一人膝を抱えて彼を待ち続ける。
……これからこんな夜を、あと何度越えるのだろうか。
そんな事を考え自嘲気味に笑ったその瞬間、窓から差し込む月明かりで、左手の薬指に嵌められた指輪が鈍く光る。
その光りに目を細め、それからギュッと強く膝を抱えた。
絶えず迫る恐怖を抑える様に、今にも逃げ出し、投げ出してしまいそうな……弱い自分を隠す様に。
その次の瞬間、ガタンと何かの音が聞こえ、ビクッと身を竦める。
しかしすぐに戦闘態勢を取り、そのままゆっくりと扉に向かって近付いて行く。
すると次の瞬間、部屋の扉が開かれ……人影が見えた。
それに向かって銃を構えた瞬間、ハッと大きく目を見開く。
「……藤谷」
そう小さく彼を呼ぶが、俺はその場から動く事が出来なかった。
何故なら月の光に照らされる彼の身体は……目を覆いたくなるほどに酷い傷を負っていたから。
彼の腹からはボタボタと血が滴り落ち、藤谷は傷口を押さえたままフラフラと部屋に入ったかと思えば、そのままコンクリートの床に倒れ込んだ。