wild poker~ワイルドポーカー~
過去 【side‐J】

揺らいでいた景色が次第に形を取り戻し、そして見えた光景に微かに息を呑む。

そこはとあるマンションの一室。

置かれている家具も、敷かれている絨毯も、閉められているカーテンも……それは俺の住んでいた《部屋》と全く同じだった。

「もうすぐ君は辿り着くのかもしれない。《主人公》としての……そんな《結末》に」

突然聞こえたその声に、ギリッと音がなるほどに歯を食い縛った。

それからそっと後ろを振り返れば、そこには一人の少年の姿が見える。

それは漆黒を纏う……残酷な《悪魔》

その少年は手にした写真立てを静かに見つめ、何故か悲しそうに目を細めていた。

「やっぱり君は主人公としての素質があったんだね」

「……どういう意味だ」

俺の呟く様な問いに、少年は俺に視線を向け、手にしていた写真立てを置く。

「君は沢山のモノに愛され、守られ、必要とされる。それこそが主人公である条件。君の為に沢山の人が死のうとも、君は絶対に生き残る。まるでそれが……《運命》だったかのように」

そう言って少年はクスリと笑う。

「この世界に来て、皆が君に力を貸した。《クラブの6》も《ダイヤのK》も《ハートの10》も、遠い昔の《ダイヤの7》……そして彼、《スペードのA》の《佐伯千尋》が君を守ろうとしたように」

その少年の出した名前に、俺の最悪な憶測が当たっていた事を知る。
< 430 / 449 >

この作品をシェア

pagetop