wild poker~ワイルドポーカー~
「ああ、お兄さんが《あの子》の言っていた《勇者様》ね?」
「……え?」
少女の言葉が理解出来ず、思わず小さく声を洩らすと、少女は可笑しそうにクスクスと笑う。
「勇者様はこれをお探しでしょう?」
そう言って少女は俺に向かって一枚のカードを差し出す。
それは……《ハートのJ》のカード。
「これ……」
「私の《命のカード》……勇者様に差し上げます」
少女はそう言ってニッコリと、無邪気な笑みを浮かべて見せる。
「《あの子》が言っていたの。勇者様は悪い《悪魔》を倒す為に、このカードが必要だって。だから使って下さい」
それだけ言うと少女は無理やり俺の手にカードを持たせ、それから真っ直ぐに俺の後ろを指差した。
その視線を辿る様に後ろを振り返れば、そこにはこの幻想的な世界には似つかわしくない……《機械》の姿が見える。
「……ゲームテーブル」
その呟きに少女はコクリと頷き、《さぁさぁ》という様に、俺の背中を押した。