wild poker~ワイルドポーカー~

「勇者様は世界を救うのね。まるで本の中のヒーローの様に」

そう言って少女は瞳をキラキラと輝かせ、羨望の眼差しを俺に向ける。

「……そんなんじゃないよ」

声を震わせそう答えると、愚かな自分を嘲笑う様にそっと頭を押さえた。

そんな俺の姿を少女は暫く見つめ、次の瞬間、俺の服の裾を引く。

「そんな事無い。貴方はきっと……色んな人を救ってあげるの」

少女はそう優しく囁くと、ギュッと俺を抱き締める。

傷だらけの細い身体を強く抱き締め返すと、抉られる様に胸が酷く痛む。

しかしその痛みを擁いたまま、そっと浮かび上がったボタンに指を触れた。

その瞬間、辺りが目の眩む激しい光に包まれ、何も見えなくなる。

抱き締めていた筈の幼い身体も、残酷な運命を記したカード達も、恐ろしいくらいに美しい満月も……圧倒的な白い光に全てが掻き消され、見えなくなった。

《おめでとう……これで君は自由になった》

白い世界の中に、少年の甘い囁きが聞こえる。

《さぁ……早く僕の元へ》

その少年の悲しい呟きと共に、そっと目を開く。

すると目の前には、黒と赤の……不気味な《洋館》が見えた。
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