wild poker~ワイルドポーカー~

「あれ?もしかして……同情してる?君を……君達を地獄に突き落したこの僕に?」

「お前は……」

「そう、君が今考えている事と、そう違わない。僕はこの屋敷に住んでいた変態に買われてきた玩具。もう……何十年も昔の話だけどね」

俺の言葉を遮って少年は淡々とそう説明した。

「この屋敷に住んでいた男は拷問好きの変態でね。貧しい国の子供たちを買ってきては拷問して愉しんでいたのさ。僕もそんな中の一人。生きようが死のうが、世界にとって何の関係も無い、ちっぽけな存在だった」

まるで他人事のように少年は語り、それから深い溜息を吐く。

「地獄の様な時をここで過ごしながら、僕はずっと考えてた。どうして神様は……世界はこんなに僕に残酷な仕打ちをするのだろうかって。幸せな人達と、僕は一体何が違ったのだろうかって」

その少年の言葉に何も答えられず、ただ手にした剣を握り締める。

「僕が誰にも知られず死んでいく中、その死を惜しまれ沢山の人に泣いてもらえる人がいる。そんな彼等と僕は何が違うの?両親に愛されて生まれてきて、温かなご飯が食べられて、安心して眠れる家があって、学校に通えるそんな子供たちと、僕は一体何が違うの?そう、ずっとずっと……考えてた」

そう言って少年は悲しそうに笑うと、それから静かに目を伏せる。

「まるで僕は本の中の脇役だった。名前も無く、そいつが死のうが生きようが、物語は何も変わらない。世界を救うのは決まって最高の力を持った勇者様で、悪から皆を守るのはスーパーヒーローで、犯人を暴くのは名探偵。そんな《主人公達》と、僕は一体何が違ったのか。その答えを僕はずっと探していた」

そこまで言って少年はクスクスと可笑しそうに笑う。
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