wild poker~ワイルドポーカー~
「さぁ……僕を殺してよ。勇者は悪を滅ぼさなければいけない。君は世界を救うんだ。それこそが世界の定めた《運命》」
それだけ言って、少年は静かに目を閉じた。
まるで神の裁きの時を待つかの様に。
そんな彼の姿を見つめたまま、一歩、また一歩と少年の元へと近付いて行く。
ドクドクと壊れそうな程に心臓が鼓動を速め、微かな眩暈すら覚えたまま残酷な《悪魔》へと向かって行った。
……そう、これは俺の《敵》
沢山の人の命を、心を弄び、奪った……最低最悪の《悪魔》
……やるべき事は決まっている。
そう自分に言い聞かせるように心の中で呟き、それと共に走り出す。
その瞬間、様々な記憶が頭を過ったが、それを無視して強く歯を食い縛り、そしてそのままの勢いで、少年の身体へと……剣を突き刺した。
少年の身体を突き抜けたその剣先が壁に触れ、ガキンと鈍い金属音が耳に響く。
それと共に生温かい液体が剣を伝い、それは俺の震える手を悲しく濡らした。