wild poker~ワイルドポーカー~
「……永い……夢を見ていた気がする。ずっとこの時を……待ち続けながら」
擦れた少年の呟きと共に、辺りの景色が揺らいでいく。
仄暗い残酷なこの部屋を淡い光が照らし、それは静かに輪郭を失って行った。
「やっぱり君は……僕の望んだ《主人公》だった」
少年はそう言ってクスリと笑うと、そっと俺の胸へと額を付ける。
「いや……俺は主人公なんかじゃない。この《物語》の本当の主人公は……きっと《お前》だったんだ」
そう言ってそっと少年を抱き締める。
すると少年は微かに身体を強張らせ、でもそれから俺へと身体を預けた。
それと共に俺の服を温かな《何か》が濡らし、それは俺の胸を息も出来ない程に締め付ける。
しかしそれ以上は何も言わないまま、ただ強く少年を抱き締める。
「……ありがとう」
その少年の穏やかな囁きと共に、辺りが眩しい光に包まれた。
目の眩む激しい光に目を瞑り、そして光が治まりそっと目を開けば……そこにはもう、何も無かった。
あの洋館も、手にしていた剣も、悲しい少年も……全てがまるで《夢》の様に消え去ってしまった。