wild poker~ワイルドポーカー~
「何かヤバい奴に会っちまったな」
そう言って藤谷は俺の横まで歩いて来ると、そっと地面に倒れたままの死体を見つめた。
さっきまで確かに動いていたはずのそれは、口や胸から夥しい血を流し、白い地面を真っ赤に染めている。
そんな哀れな女の姿に眉を顰めると、そのまま綺麗な雪を集め、女の死体に雪を掛ける。
「そんな事しなくても、死体は24時間経てば勝手に消えるぜ?」
「……気持ちの問題だ」
「変な所、優しいのね」
そう言って藤谷は困った様に笑うと、俺と同じ様に女の体に雪を掛け始めた。
……正直、凄く困惑していた。
俺は周りからも、そして自分でも、比較的ドライだと思っている。
しかしこの異様な世界の中、初めて人の《死》を目の当たりにし、その残酷な現実に酷く狼狽していた。
……顔には出さないが。