せ ん せ い
ついさっきまで、複雑な感情の入り交じった渋い表情をしていた斎藤先生。
気持ち悪いくらいの変わりように、吐き気さえした。
「…なに…その顔…きもい……」
「どうした、大槻。顔が紅かったけど」
「………」
気付かれてた。
余計に恥ずかしさが増してきて、行き場の無い視線を手元にやる。
最悪、最悪だ。今日は厄日。
顔が赤くなるのも、動揺しちゃうのも、自習室に2人きりだからに決まってる。思春期だから、そのせいだ。
もしこの空間に、誰でも良い、他の人が一人でもいれば、こんなことにはならないはず。
「そういうことか、大槻」
「……は?」
「お前は感情表現が下手なタイプか」
「いやいやいや、なんの話」
まずい。非常にまずい。
先生が声を高らかにしている。これはもう、嫌な予感しかしない。
オマケに、大槻も年頃だしな、とか訳のわからないことを呟きはじめ、鳥肌まで立ってきた。
再び先生の顔を見ると、やっぱり相変わらず妖しい笑顔。嬉しそうにまた「そうかそうか」と一人で呟く。めっちゃきしょい。
そして間もなく、わたしの嫌な予感は的中した。