せ ん せ い







ついさっきまで、複雑な感情の入り交じった渋い表情をしていた斎藤先生。


気持ち悪いくらいの変わりように、吐き気さえした。




「…なに…その顔…きもい……」

「どうした、大槻。顔が紅かったけど」

「………」





気付かれてた。

余計に恥ずかしさが増してきて、行き場の無い視線を手元にやる。


最悪、最悪だ。今日は厄日。


顔が赤くなるのも、動揺しちゃうのも、自習室に2人きりだからに決まってる。思春期だから、そのせいだ。


もしこの空間に、誰でも良い、他の人が一人でもいれば、こんなことにはならないはず。



「そういうことか、大槻」

「……は?」

「お前は感情表現が下手なタイプか」

「いやいやいや、なんの話」



まずい。非常にまずい。


先生が声を高らかにしている。これはもう、嫌な予感しかしない。



オマケに、大槻も年頃だしな、とか訳のわからないことを呟きはじめ、鳥肌まで立ってきた。



再び先生の顔を見ると、やっぱり相変わらず妖しい笑顔。嬉しそうにまた「そうかそうか」と一人で呟く。めっちゃきしょい。




そして間もなく、わたしの嫌な予感は的中した。



< 10 / 50 >

この作品をシェア

pagetop