せ ん せ い
DSの電源を切り、立ち上がる彼。
ただでさえヨレている所々ほつれた白衣は、寝転がっていたせいで更にシワが増えたみたいだ。
そしてその古臭い白衣のポケットから、彼は普段から好んで吸っている煙草を取り出し、火を点ける。
銘柄は、マイルドセブン。一応健康に気を使っているのか、1mg。
そんなに高くない身長に、天パに猫背。オマケに童顔のクセして目が死んでるから、煙を吐き出す先生は、人生に屈折している人のように見えてしまう。
漂っているのは、まるでリストラにあって公園のベンチに座り込んでいるオジサンのようなオーラ。
「ちょっとー、生徒の前で喫煙するなんて何事」
彼の喫煙姿は見慣れているけど、やっぱり一言言ってやらないと気が済まなくて、別に思ってもいない言葉を投げ掛ける。
そして、一気に煙草の臭いが充満した保健室の換気扇を回した。
「チクらないでしょ、志衣奈さんは」
「…そりゃあ…黙っててあげるけど……」
「助かります」
先生はふっと笑うと、煙草を引出しに隠している灰皿に押し潰した。
決して、可愛らしいとか無邪気だとか、そんな笑顔じゃ無いけれど。
わたしはどことなく無気力で、だけどすぐに感情が表面に地味に表れる先生の顔が、好き。