せ ん せ い
「いらっしゃいませー」
その日も、先生はコンビニへやって来た。
それを見計らって、わたしもマイルドセブンと145円の準備をする。
ここまでは、ホントにいつも通り。
でも、彼がレジに来てからは全てが違った。
カウンターに置かれたのは、いつもののり弁とほうじ茶ではなく、メロンパンとミルクコーヒーと、チロルチョコ。
そして彼は言った。
「マルボロの緑ください」
注文する煙草の銘柄まで、いつもと違った。
変わらないのは、彼がわたしの顔を見ずに手元の財布だけを見つめているその姿だけ。
準備していたマイルドセブンと145円は行き場を無くし、わたしは急いでマルボロを用意する。
予想外の変化に困惑しつつ商品を登録しながら袋に入れていると。
「すいませんね、いつもの商品じゃなくて」
煙草のオーダー以外で初めて。
その時初めて、宮田先生の声を聞いた。