せ ん せ い
図星を突いたその言葉に、なんかムカムカして唇を噛む。
伏せた顔を上げることも出来ず、「そんなわけないでしょ」と嘘の否定をすることも出来ず。
もちろん「そうだよヤキモチだよ」なんて言えるはずもなくて。
「志衣奈さーん、怒ってます?」
耳元でからかうように言葉を続ける恋の相手に、ただただ苛立ちを覚えた。
ずっと止めてきたブレーキ。
どうせ叶わぬ恋だから、相手にされない恋だから。
傷つくのが怖くてかけ続けた。
耳元の彼はこんなにも近くにいるのに。
胸の中は、やりきれない想いでいっぱいだ。
「志衣奈さん、どうし……」
色んな想いと葛藤しながら、彼の能天気な声を聞くこと数十秒。
遂に、わたしの心が白旗を上げた。
もう、これ以上は我慢できないと。
ただの憧れでは終われない、と。
「先生、うるさい」
顔を上げると、目の前には力の抜けた彼の顔。
相変わらず髪はクルクルで、服装も適当。
そのクタクタのユルいネクタイをぐいっと引っ張り
「すき」
そのまま唇を押し付けた。