せ ん せ い
先生と最後に言葉を交わしたあの日から、一週間が経った。
常に叶わぬ恋だと自分に言い聞かせていたせいか、不思議と泣き潰れることはなかった。流石に失恋した日は泣いたけど。
もちろん、あれから保健室には行っていない。代わりに立入禁止の屋上に居座る時間が増えた。
ズズッ、と。
木枯らしに吹かれながら、屋上で一人冷たいカフェオレをすする。
寒くなってきたから温かいものを飲もうと思ったのに、全部売り切れなんてわたし本当にツイてないな。
暖かい保健室で先生がいつも淹れてくれたホットコーヒーが懐かしい。
『志衣奈さん』
わたしの名前を呼ぶあの声は、今でもしっかりと頭に焼き付いているのに。
もう直接聞くことは無いのかと思うと、やっぱり胸が痛くなる。
だけど、会うのも拒まれるのもどちらも怖いから、時間が解決してくれるのを待っている自分がいる。
わたしをドキドキさせる、心地の良い愛しい声。
もう一度、わたしの名前を呼んで欲しいと、切に願う。
「志衣奈さん」
心が病んでいるのか、よっぽど欲しているのか。
空耳まで聞こえるなんてわたしは遂におかしくなった、と首を左右に激しく振った。
「無視しないでくださいよ、志衣奈さん」
空耳はどんどん、近くなる。