せ ん せ い








だから真似したんだ。

服装も化粧もアイテムも。




だけど、前髪を変える勇気だけは、出なかった。



左右に流した髪に慣れてしまった私にとって、おでこを隠すような短い前髪は、可愛すぎて似合わない気がしたから。


ピンで留めたり指で隠したり、ハサミを片手に鏡とにらめっこしながら何度も何度もシミュレーションを重ねたけれど。



何故か、前髪を切る勇気だけは出なかった。



だけど、色々悩んで、彼の気をひく為に試行錯誤を繰り返す私とは裏腹に。


坂本の、知りたくなかった気持ちを知って以来、授業中のお喋りも、たまたま一緒の帰り道も、高橋さんの名前が頻繁に出るようになった。




その度私の心には、むくむくと不安や焦りが大きくなる。



メアド交換したとか、教科書借りたとか挨拶したとか。

そんな報告いらないっつーの。まるでガールズトークみたいで気味悪い。



メールしたいなら私が長文で送ってあげるよ。教科書だって、隣の私が見せてあげるじゃん。

毎日毎日、「おはよう」「ばいばい」って。私言ってるじゃん。



馬鹿みたいなことを、キラキラした笑顔で話さないでよ。




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