せ ん せ い
「荻野」
さっきまで私より高い位置にあった先生の顔は、随分低くなったようだ。
座り込む先生を見下ろし、急にどうしたんだろうと不安になる。
「…どうしたんですか」
「皆じゃなくて、お前を見てたんだよ」
「……はい?」
いきなりのカミングアウトに、胸の奥がむずっとした。
先生は私を見上げながら、頭を掻いて言葉を続ける。
「優しくするのも、お前だけ」
「…………」
ん?なんだって?
なるほど、私に優しいのか、先生は。良かったなぁ、私。
こんがらがる頭は、自分自身が一番よく分からなくて、ただ先生を見下ろす。
「あ、ありがとうございます」
「……ちゃんと分かってないみたいだから、この際ハッキリ言うけど」
目をパチパチとしていると、力の抜けていた右手を掴まれる。
びっくりして、肩と同時にその手も揺れた。
「先生は、好きな奴にしか優しくしません」
わかりましたか、なんていきなり先生ぶっちゃって。いやまぁ先生なんだけど。
…………ていうか。
…………え?
「そそ、それって、つまり」
「噛みすぎ」
「よよ、よ、ようするに」
「落ち着け荻野」
落ち着けません!!
この数分間の先生の発言を、良くない頭で整理すると。
どうしても、ナルシストのような答えしか浮かんでこないんだから。