せ ん せ い
帰りのホームルーム、先生からの一言が終わる前。
わたしは靴下をしっかりと上げ、逃走のスタンバイをした。
そして学級委員が"さようなら"と挨拶をした直後、多少のフライングはあったものの、気づかれる事なく逃走成功。職員室の前も一瞬で通り抜ける。
わたしは数学はできないけれど、走るのは得意なのだ。こういう時は、逃げるが勝ち。世の中上手く出来ている。
「はやく帰って、最終回~」
自然と鼻歌混じりに喜びが口から溢れ出す。
先生は、まさかわたしがもう下駄箱にいるなんて、夢にも思っていないだろう。ザマーミロ!
「なめるなよ、このわたしを!」
「さっきから独り言激しいな。ついに頭のネジ吹っ飛んだか」
「なんだと!失礼だ……な………」
突然
どこからともなく聞こえた声に腹が立ち、言い返すために辺りを見回すと。
発見したその顔に、鼻歌が飛び出すくらいの良い気持ちが一瞬で何処かへ行ってしまった。
嫌みったらしいその声は、モチロン斎藤先生のもの。
「…さ、斎藤先生なぜ下駄箱に」
「さすが大槻、予想を裏切らない」
威圧的に腕を組んで立っている先生は、よっぽど怒っているようで。
強制的に、わたしは職員室横の自習室へ連れていかれました。