せ ん せ い
わたしの理解力の無さに呆れているのか、疲れているのか。
それとも、わたしに理解させられない自分がもどかしいのか。
先生は難しい顔をして、まぶたを軽くマッサージする。
「先生、いいよわたしのこと諦めても」
「……大槻」
追い詰められたような表情の先生は、わたしの言葉に顔を上げ、メガネを持ち上げた。
「俺は、大槻が理解できるまで諦めないから」
そう言った斎藤先生の瞳はキレイで、吸い込まれそうで。
ぶっちゃけ男として意識したことの無いその顔に、少しドキッとした。
「……ふ、ふーん、教師って大変な仕事だね」
「大槻、俺は教師としてじゃなくて、真剣にお前のことを思って…」
「ちょっと、やめてくださいよいきなり告白なんて…」
「ふざけるな」
ギロリと睨まれ、目線を逸らす。
ジョークに決まってるじゃん。そんなに怒らないでよ。
ほんと、冗談通じないんだから。
「…おれに問題があるわけ?あるなら直すから」
お、次はなんか怖い元カレみたいなこと言い出したぞ。
ていうか、わたしは単に数学が嫌いなだけで先生に恨みがある訳じゃないし。
むしろ、得意科目である国語の先生の方が大嫌いだし、大問題だ。口は悪いし、贔屓はするし。
だから、そんなに思い詰めなくても。
「別に、先生に問題はないよ。数学が嫌いなだけ」
「担当教師が嫌いだと、その教科も嫌いになるもんなんだよ」
「そんなことない」
なんか、なんか。
胸が痛む。
たまにウザいけど一生懸命な先生には
苦しそうな顔は、似合わないよ。