せ ん せ い






わたしの理解力の無さに呆れているのか、疲れているのか。

それとも、わたしに理解させられない自分がもどかしいのか。



先生は難しい顔をして、まぶたを軽くマッサージする。




「先生、いいよわたしのこと諦めても」

「……大槻」


追い詰められたような表情の先生は、わたしの言葉に顔を上げ、メガネを持ち上げた。



「俺は、大槻が理解できるまで諦めないから」



そう言った斎藤先生の瞳はキレイで、吸い込まれそうで。

ぶっちゃけ男として意識したことの無いその顔に、少しドキッとした。



「……ふ、ふーん、教師って大変な仕事だね」

「大槻、俺は教師としてじゃなくて、真剣にお前のことを思って…」

「ちょっと、やめてくださいよいきなり告白なんて…」

「ふざけるな」




ギロリと睨まれ、目線を逸らす。

ジョークに決まってるじゃん。そんなに怒らないでよ。

ほんと、冗談通じないんだから。



「…おれに問題があるわけ?あるなら直すから」



お、次はなんか怖い元カレみたいなこと言い出したぞ。


ていうか、わたしは単に数学が嫌いなだけで先生に恨みがある訳じゃないし。

むしろ、得意科目である国語の先生の方が大嫌いだし、大問題だ。口は悪いし、贔屓はするし。




だから、そんなに思い詰めなくても。




「別に、先生に問題はないよ。数学が嫌いなだけ」

「担当教師が嫌いだと、その教科も嫌いになるもんなんだよ」

「そんなことない」



なんか、なんか。


胸が痛む。



たまにウザいけど一生懸命な先生には


苦しそうな顔は、似合わないよ。




< 7 / 50 >

この作品をシェア

pagetop