vivid
 せわしいな。

 朝日が登って白んでいく空を見ながら、ぼんやりと思った。明日の朝には、もうここから離れなければならない。

 昨日の夜、寝過ぎたせいで寝られない。そのせいで、くだらないことばかりを考えていた。

 血印をした師団の団員は、どんなヤツだったのか。

 オレは一体いつまで生きていられるんだろう。

 なんでキティは、あんな寂しそうな顔をした?

 考えても、こたえのでないことばかりだ。

 宿の人にもらった金属製のカードケースを開けてみる。キティから預かった、あのカードを入れていた。

 戦闘では役立たずで足手まといなガキだろうけど、たぶんキティはそんなオレにカードを管理する役目を与えてくれたんだ。

「ルーイ、」

 静かな声がオレを呼んだ。イッシュだ。

「眠れないのか」

 頷く。"昨日寝過ぎたから"、と笑って。

「まだ早い」

 ふざけた理由に安心したのかイッシュも少し表情を崩した。

 オレ、上手く笑えてたかな。

「目を閉じて、横になるだけでもいい。今のうちに休んでおけ」

「………うん」

 目を閉じる前、もう一度だけ見た窓の向こうの空は、氷で色の薄くなった冷たいレモネードみたいだった。
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