vivid
俺は"白狩り"の被害者であり、ある意味では加害者でもある。
"見ぃーつけた、二丁銃の子猫ちゃん"
上から降ってきた声の持ち主を女にならって見上げた。どうやら、また女らしい。最初に俺の上へ降ってきた方の女の敵なのか、味方なのか。わからない。
ただ少なくとも現れたばかりの女の方からは殺気のようなものを感じる。厄介事には、できるだけ首を突っ込まないにこしたことはない。ひとまず女に突き飛ばされたときに背中にぶつかった木の後ろに隠れて様子をうかがうことにした。
現れたばかりの方の女は太い木の枝に腰掛けて子どものように足をブラブラと揺すっている。
観察していてハッとした。
灰色の軍服、胸元で光る数字のバッジ。
あの男も、俺があの日、殺した男も、灰色の軍服を着て数字のバッチを身につけていた。あの男と異なる点があるとすれば女が帽子をかぶっているということと軍服がズボンではなくスカートだということだ。
「グレイ師団ウォームグレイ隊0番部隊隊長、シュリー。えーと、親愛なる国王陛下直々のご命令によりー、ネコちゃんをおむかえに参上いたしましたぁ~」
「なぁにが"ネコちゃん"だよ。その頭の悪そうな呼び方、やめろっていつも言ってんじゃないのさ」
「えぇ~、なんで~?可愛いのになあ」
コロコロと笑う様は"ネコちゃん"と呼ばれる女より余程、女らしいそれだった。
"おむかえ"に"いつも"。口ぶりからして二人は顔見知りらしい。
そして、"グレイ師団"と"国王陛下"。
シュリーと名乗った女が言ったことから察するに"グレイ師団"とは"国王陛下"お抱えの軍隊。十年前に俺が殺した男は、その軍隊の隊員だったに違いない。ここまではおおよその検討がつく。
解らないのは、なぜ"国王陛下"が"ネコちゃん"と呼ばれた女に"むかえ"を寄越すのかだ。
"残念なことにアンタとアタシのだあい嫌いな黒一色に、ね"
なぜ女は、あのようなことを知っていたのか、そして俺に話したのか。王室の人間だと言うのなら尚更、女の言動は理解しがたいものとなる。