vivid
「にしても、たかがアタシのむかえのために、わざわざWG(ウォームグレイ)の隊長格を寄越すのかい。ったく、あのバカキング一体なに考えてんだか……」

「まあまあ、それだけネコちゃんのこと愛してるんだよ~。だから一緒にオウチ帰ろーよぉ、ネコちゃーん」

「わかったよ、わかったから。その呼び方はよしなって言ってんじゃないのさ。アホ陛下には"三日後に帰る"と伝えとくれよ」

「もぉ~、しょーがないなあ。じゃあじゃあ、シュリーと遊ぼー?」

「……まったくアンタって子は…なんでそうなるんだい」

「だってぇ、ネコちゃんたら全っ然、軍の訓練場に顔出してくれないんだもーん」

「当然だろう、アタシは軍の人間じゃあない」

「えぇ~、いいのかなあ?そんなこと言って。遊んでくれなきゃヘーカに言いつけちゃうよぉ?ネコちゃんがヘーカのこと"バカ"とか"アホ"とか言ってました~、って」

「………いいだろう、相手したげるから降りといで」

「わぁ~いっ!」

 ………一体なにがどうなってるんだ、話の展開が早すぎて益々、理解できない。

 おそらく"ネコちゃん"は"陛下"のお気に入り。

 これから"ネコちゃん"とシュリーは何やら"遊び"始めるようだが、もし本当に"ネコちゃん"が"陛下"の近しい存在だと言うのなら俺は今のうちに逃げた方がいいのではないだろうか。相手は"黒"、俺は"白"。未だ"ネコちゃん"が俺に殺意を向けることはなさそうだが彼女が国王に通じている(かもしれない)以上、厄介事に巻き込まれれば俺の命の保証はできないだろう。

"一年後、この世界は一色に染まる"

 何か引っかかる。あの女の言動の意図が掴めるまでは、やはり逃げられない。

 なぜ一年後なのか、黒一色に染まるとは一体どういう意味なのか。

 腹を括って再び二人の女を観察することにする。が、木陰から顔を出した瞬間、弾丸が頬を掠めかけた。

 "遊ぶ"って、そういうことかよ…!

 一丁の銃を手にした女は明らかに俺の方を見て片目をつむって見せた。それで謝っているつもりか、あの女!

「やだぁ、ネコちゃんのノーコン!ちょっと腕落ちたんじゃなぁ~い?」

「手加減してやってんのさ。お望みなら二丁使ってやったっていいんだよ?」

「ふふ~、遠慮しとく~」
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