vivid

忘れ形見とイエローグリーン

(ルーイ視点)


 カラーコードを訊きあわない、見せあわない。それが中立地帯での暗黙のルールだった。

 どんなに訊かれても"白"だと名乗るな、どんなに言い寄られてもカラーコードだけは見せるな。それがガキの頃からのジィちゃんの言いつけだった。

 なんでそんなに必死になって自分の"色"を隠さなきゃならないのか、ガキの頃のオレには全然わからなかった。

 確か九歳くらいになったときだったと思う、ジィちゃんがオレに"白狩り"について話したのは。

 そのとき初めて、それまで"死んだ"とだけ聞かされていた父さんと母さんの死因がわかった、"白狩り"で"黒"の奴らに殺されたんだ、って。

 正直ピンとこなかった。思えばオレには気づいたときからジィちゃんしか居なかったし、それ以前の記憶は全くない。思い出せる一番古い記憶は六、七歳の頃のものからだった。

 五歳だろ?覚えててもよさそうなもんだけどなあ。

 まあ何はともあれオレにはジィちゃんが居たから寂しい思いをしたことなんてなかった。

 だからか、正直"黒"が憎いとも思えなかった。薄情な息子だよな。せめて記憶がありさえすれば悲しめたかもしれないのに。できるもんなら父さんや母さんを想って泣きたかったよ。

 でも、まあ現実、記憶がないおかげでオレは、そんな悲しみとかなんやかんやを味あわないで済んだってわけだ。

 ああ、あとジィちゃんは、こんなことも言っていた。

"colorlessと呼ばれたら怒れ"

 "色無し"って意味なんだろうけど、やっぱりオレにはイマイチ、ピンとこない。
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