vivid
ジィちゃんが死んだ。
涙もでなかった。ぶっちゃけた話、ジィちゃんが本当にオレと血のつながった"じぃちゃん"なのかさえオレにはわからないからだ。
結局、もとをたどれば五歳以前の記憶がないせい、というかなんというか。
そりゃあ悲しかったよ、もちろん。今まで自分を育ててきてくれた人が死んだんだから。泣けるもんなら泣きたかった。でも泣けなかった。我ながら薄情な孫だよ、ほんと。いや血ぃつながってっかどうか、わかんねーけど。
とりあえず今の自分の境遇を的確に表せる言葉がある。
"天涯孤独"
死に際のジィちゃんに思わずオレは言ってしまった、"ジィちゃんが居なくなったらオレ独りになっちゃうじゃんか"って。
ジィちゃんは少しだけ困ったように笑って、言った。
"まずはイエローに行きなさい。そしてキティを探すんだ"
イエロー、キティ。繰り返すオレの頬を撫でてジィちゃんは、また力なく笑った。
"死んだって変わらないさ、私はお前と、あのお方の幸せを心から祈っているよ"
"あのお方"って誰だよ、"キテ"ィって誰だよ。訊きたいことは色々あった。でもオレは頷くだけにした。あれこれ言うより、ずっといい。
『ありがとう』
ジィちゃんに届いたかどうかは、わからない。
オレがそう言ってすぐにジィちゃんの皺だらけの手はオレの頬から滑り落ちていった。