vivid
「イエローに行け、って言ってもなあ…」

 イエローはレッドとグリーンの間にある街だ。

 この世界はレッド、ブルー、グリーン、そしてブラックの、四つの国で成り立っている。ブラック以外の国の間にはイエローを含むシアン、マゼンタという中立地帯の中でも大きな街がある、らしい。 全部ジィちゃんから聞いた話であってグリーンの近くの中立地帯の小さな町から今まで出たことがなかったオレには、このくらいのことしか、わからない。

「つーか、"キティ"って誰……」

 "誰"、というより人なのかどうかもわからない。

 "子猫"って意味だよな?じゃあ猫なのか?いや、ちょっと待て。遺言が"猫を探せ"って……いや、そんなまさか。

 手がかりはジィちゃんが残していったネックレスと"キティ"という名前だけだ。イエローに行ったところで見つかるかどうか………正直、見つかる気がしない。

「……そもそもオレが"誰"だよって感じ」

 ジィちゃんが死んで慣れ親しんだ小さな町を出てから余計なことを考える機会が増えた気がする。独りでいる時間ばかりが続いているせいだと思う。

 五歳以前の記憶がない、両親の顔も名前も知らない、祖父だと思っていた人が本当に祖父なのかどうかもわからない。

 まあアレだ、"所在ない"っつーか、なんつーか。

 兎に角"キティ"って奴を探せば自分について何かわかるのかもしれない、ジィちゃんが死に際に言ったくらいだし。

「"自分探しの旅"ってやつ?…………やっべー、自分で言ってて寒ぃーわ」

 名前からして"キティ"って奴は女なんだろうか。もし女なら可愛い子がいいなあ。

 独り言を言いつつ、そんなことを考えながらも足は休めない。

 緑色の強かった景色に、だんだんと黄色が混ざってきた。心なしか気温も少し下がったような気もする。
< 19 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop