vivid
「黄色っぽくなってきたってことは、そろそろ着くのかな…」

 さっきから独り言ばっかで、なんかちょっと残念な奴みたいになっちゃってるオレではあるが何も考えずにブツブツ言ってるわけじゃない。

 実はオレ、結構前から尾行されてる。

 オレの"独り言"を聴いているなら行き先がイエローだってことは、もうわかったはずだ。先回りするなりなんなり、すきにすればいい。それでも後からつけてくるってことは、よっぽど慎重派なのか聞こえてなかったのか、それともただの馬鹿なのか。

 もしかして今オレのストーカーしちゃってる人こそがキティなんじゃね…?いやいや、まさか。

 そう思いつつも、もし本当にそうなら探す手間が省ける、とオレは安易な考えに甘えた。息を吸い込んで、さっきよりも大きな声で"独り言"を言ってみることにする。

「あーあっ!キティさーん!いるなら出てきてくださいよー!!……って言って出てきてくれたら楽なんだけどなあ…」

 少し足を止めてみた。が、反応はない。

 そう上手いこといかねぇよな。

 溜め息を吐きつつ、また歩き出す。一歩を踏み出した瞬間、そのときだった。

「うっわ、あぶね…!」

 銃声が一つ、後ろからしたかと思えば耳元を弾丸が掠った。弾丸の行く着く先がオレの身体じゃなくてよかった、助かった。

 ヒヤヒヤしながら、とりあえず後ろを振り返って状況確認、敵らしき姿なし。

 腰のホルダーに手を伸ばす。オレの相棒、二本の短剣は使いなれちゃいるけどジィちゃんに教わったのは自分の身ひとつ守れる程度のモンで銃使う相手に勝てるかどうかなんてわからない。

 そもそも銃持ってんなら今じゃなくったって、いつでもオレを殺れたはずだろ?意味わかんね。気配は、たぶんずっと射程距離内ってやつ?に入ってたと思うし。まあ、とりあえずカマかけてみっか。

「ねぇー、いま銃ぶっぱなした人ー、もしかして"キティ"って奴の知り合いー?もし知ってんならさぁー、ワクスの孫が探してるって伝えてく、」

 最後までは言えなかった。

 速すぎて何がなんだかわからない。視界の隅に黒いものが見えたぐらいだ。

「う、わ……っ」

 グラッと視界が反転する。そのあと、やってきた衝撃。

「い………っ、てえぇー」

 何かに突進された?つーか、押し倒された?

 頭を打つことだけは、なんとか避けられた。何かが腹の辺りに乗っかる感じがして視線を持ち上げる。
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