vivid
 いや、視線持ち上げる前に顎の下に何か突きつけられた。痛い、痛いけど下手に喋ると舌噛みそうで想像すると余計に痛い。ただでさえ背中を地面に叩きつけられて痛いってのに。腹の方に乗っかってる何かは大して重くないけど。

 つーか、ちょっと待て、オレ。今、上に乗っかってんのって今さっきオレの後ろで銃ぶっぱなした奴だよな、たぶん。それってヤバくね?じゃあ顎下に押し付けられてんのって銃じゃね?え、ジィちゃんの遺言の謎わからずじまいで早くも死亡フラグ?

 ホルダーからは完全に手が離れている。せめてオレも剣を抜ければ、と手を伸ばしてみるが震えて上手くいかない。何せ銃を向けられるのなんて生まれて初めてだ。

「震えてんのかい?」

 え、話しかけられ…た?しかも声、女っぽい?

 相手が人間、しかも女だとわかって少し気が緩んだ。が、オレの腹の辺りに乗っかっている(たぶん)女はオレの気の緩みに気づいたらしく更に強く銃を押し付けてくる。

 すいません、乗っかってんの女なら、なんかちょっとラッキーじゃね?とか思っててスミマセン。どっちにしろ命の危機には変わりねーよ、銃向けられてんだから。

「撃たれたくなかったら、いくつか質問に答えてもらおうか」

「質、問…?」

 顎の下に押し付けられていた銃が今度は額に向けられた。

 でも、もうそれほど怖くない。震えもおさまり始めている。
 なぜかって?相手の顔が見えたからだ。

 やっぱり女だ。

 それも若くて、美人の。気はちょっと…いや、かなりキツそうだけど、うん、美人だ。

 化粧のせいもあるかもしれない、猫のようにつり上がった大きな目は見方によっては愛嬌が感じられる気もした。

 実際、真っ赤な色をした唇は笑ってるし"茶目っ気たっぷり"って言葉がピッタリ当てはまりそうだ。

 まあ何はともあれ、オレは猫目の強気系美女に乗っかられてるわけだ。オレだってまあ?一応っつーか男だし?さっきまで銃にビビって青かった顔が赤くなっちゃってんじゃないの?とか気にするわけデスヨ。

 一度かち合った視線を露骨にそらして腕で顔を覆う。

 せめて情けない声を出さないようにと喉に力をいれた。

「質問、ね。オレが答えられることなら、なんだって答えるよ。だから、なんつーかそのー……おねえさん?できれば銃を下ろしてもらって、オレの上からも降りてほしいなぁー、なんて…」

「そうだ、いい加減にしろ、キティ」
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