vivid
「いくら美人だからって、いきなり人のこと押し倒して銃向ける奴の手なんか借りねぇよ。つーか、人に名前訊くときはフツー自分が先に名乗るもんだろ、ありきたりなセリフだけど」

 "キティ"は少しだけ目を見開いた。かと思えば次の瞬間には笑っていた。

 意味わかんね。オレ正論言ったよな?

 眉を寄せたオレに構わず"キティ"は差し伸べていた手を腰にあてて"そうだね"と頷いた。

「ボウヤの言うとおりだ。今までの非礼を詫びよう。アタシは正しくアンタの探している"キティ"だよ。そっちは、」
「イッシュだ。この女は何を考えているのか俺にもサッパリだが敵意も悪意もない、許してやってくれ」

「はあ………ご丁寧にドウモ」

 今度はイッシュと名乗ったイケメンがオレに手を差し伸べた。コイツはオレに何をしたわけでもないしな。そう思い素直に手を取って立ち上がる。

 敵意はない、という言葉に少なからずホッとした。なんとなくではあるが、このイケメンからは誠意が伝わってくる。嘘はないと思った。

 相手の自己紹介は済んだ。本当なら次はオレの番。でもまだ本当に、この女が"キティ"なのか、わからない。確信が得られるまでは、できるだけオレ自身については話さない方がいいだろう。

「さあ、名乗ったよ、ボウヤ。次はアンタの番だ」

「名前なんか、どうだってよくない?先にあんたの"質問"を済ませろよ、"キティ"。さっき言ってたじゃん」

"いくつか質問に答えてもらおうか"

 "キティ"は確かに、そう言っていた。

 コイツが本当にジィちゃんが探せと言った"キティ"なのか、まずは相手の出方を窺ってから判断しよう。

 "キティ"は、また笑って両手を腰にあてなんだか偉そうに少し背中を反った。

「そうだね、いいだろう。アンタに訊きたいことは三つだ」

 目の前に指が一本たてられた。着てる服も真っ黒だけど爪まで真っ黒だ。
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