vivid
「安心しなよ、病気とかじゃないし。寿命だってさ。死に際はホント、眠るみたいだった」

「……そうかい」

「なんなら今から戻って墓参り、する?きっとジィちゃんも喜ぶよ」

「いや…」

 黒い指先がオレの頭へと伸びてきたかと思えばワシャワシャと髪をなで回された。

 底の厚いブーツを履いているせいかキティの方が少しだけ背が高くて、なんだかきまりが悪い。

「遠慮させてもらうよ。何せ、アタシには時間がないんだ」

「あ、そう」

「さて、三つ目の質問だ」

 頭のてっぺんにあった手が右のこめかみの辺りで止まる。

 背筋がヒヤリとした。

「アンタの"色"は、どこにあるんだい?」

「は…?」

「カラーコードだよ」

 オレのカラーコードが、どこにあるかって?奇跡的にも、ちょうどあんたの手元にあるよ。

 とは口が裂けても言わない。オレはジィちゃんの言いつけを生まれてこのかた破ったことはない。

「ここ、中立地帯なんだけど」

「そうだねぇ」

「あんた、暗黙のルール知らないわけ?」

「知ってるよ」

「じゃあ、なん、」
「言い方を変えようか。三つ目の質問は"質問"と言うよりは、ただの"確認"なんだよ、ルーイ」

「あっそ。だったら、わざわざ訊く必要なんか…、」

 あ。え?今こいつなんて言った?

"ルーイ"

 オレの名前、今キティは確かにオレの名前を呼んだ。

「え、な、なんで…」

「見違えたよ。大きくなったね、ルーイ」

「え…」

 優しい口調とは裏腹に荒々しい手つきで髪をかきあげられた。

 右のこめかみがのぞく。

 そこにはオレのカラーコードがある。

「"白"……」

 目を見開いてイッシュが呟いた。

 キティは満足げに笑った。

 意味、わかんねぇ。

「なんでオレの名前、知ってんだよ。お前……ジィちゃんの、なんなんだよ!」

「言っただろう、"ワクスには昔、世話になった"って」

「だからって、なんで………なんでカラーコードの位置まで、」
「やっぱり覚えていないんだねぇ…」

「……え?」

 髪を掴んでいた手が離れた。

 キティは心なしか悲しそうな顔をしていた。
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