vivid
「なあ、あんたとキティって、どんな関係なの?」

 寂しく野郎と二人旅。会話がないのも、どうかと思って道中、なんの気なしに訊いてみた。

 オレの斜め前を早足に歩いていたイッシュは少しだけ顔を此方に向けた。

「関係?」

「そ。付き合ってんのかなあ、とか思ったりしたから。あ、言いたくないならいいけど、別に。勝手に想像するから」

「…………付き合っ…っ、」
「え、何、マジで!?」

 オレだって立派な思春期の男子だ、色恋に全く興味はないのかと訊かれて全くないと答えたら嘘になる。顔を真っ赤にして、もの凄い勢いでバッと振り返ったイッシュに思わず掴みかかった。

 えっ、え、マジ…!?じゃあオレなんかが、くっついてったら二人からしたら、おじゃまなんじゃね?

 期待と不安の入り混じった妙な気持ちでなあ、どうなんだよ、と腕を揺すれば、これまた凄い勢いで振り払われた。

 顔は、やっぱり赤い。

「お…っ、キティと俺は二日前に会ったばかりだ!」

「二日前に会ったばっかなのにフォーリンラブ!?それって、すごくね?」

「ちがう!だから、あの女と俺の関係は、そんなんじゃない!!」

「んだよー。そんな照れなくったって、いいじゃん」

「照れてない!そもそも、あの女とは知り合ったばかりで"関係"と呼べるものすらないんだよ!!」

「わ、わかった!ごめん、わかったから!悪かったよ、変なこと訊いて」


 あまりに必死だから、とりあえず納得したフリをして頷いた。

 お似合いだと思ったんだけどなあー、美男美女で。

 にしても、これだけ必死になられるとキティがイッシュをからかうのには十分すぎる理由だな、とオレは小さく笑った。

 なんかちょっと見てるこっちが恥ずかしくなってくるような気がしないでもないけど。イッシュの顔、未だに赤いし。

「あのさ、もう一個、訊いてもいいか?」

「……内容によるな」

 さっきので気を悪くしたのか振り返った顔は見事な仏頂面だった。

 オレは構わずにイッシュとの距離を詰めて隣に並ぶ。

「キティってさ、一体、何者なの?」
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