vivid
「思ってたよりも早かったねぇ」

 昼はひたすら歩いて夜は野宿。イエローに着くまでの数日間はあっという間に過ぎていった。オレとイッシュたちが出会った地点は、なんだかんだでイエローまでの道のりを半分以上も行っていたらしい。

 イエローの入り口で偉そうに腰に手をあてているキティは満足げに笑った。

「さて、宿でもとって、ゆっくり休ませてやりたいのは山々だけどサッサと用件を済ませるよ。何せ、アタシには時間がないんだ…………ルーイ」

「……ハイ!?え?何?」

「ちゃんと前見て歩きなよ。迷子になりたいのかい。物珍しいのはわかるけどねぇ、生憎、観光をしに来たわけじゃあないんだよ」

「………へーイ」

 ガキ扱いすんなよ!って言ってやりたいところだけど、お生憎さま、オレは十五のガキだ。今よりもっとガキの頃からグリーンの近くの小さな町から出たことがないせいかイエローみたいな大きな街は、なんというかまるで別世界だった。

 オレの町は本当に小さくてすれ違う人みんなが知り合いって感じだったけどイエローは人の数が故郷(と呼べるかどうかはわからないが)の比じゃない、多すぎる。

 風景は見渡す限り全て黄色。店が沢山あって賑やかだ。"喧騒"って、こういうもんのことを言うんだなあ、と初めて思った。

 そんなわけでキティとイッシュの後ろを歩きながら辺りをキョロキョロと見回していたらキティから、お叱りを受けた、というのが現状だ。

「イッシュ、手でも繋いでやったらどうだい?」

「……そこまで子どもでもないだろう。それより、人捜しというのは、」
「安心しな、すぐに終わるさ。居る場所の見当はついてる」

 キティはズンズンと人の波を縫うようにして進んでいった。

 人ごみに慣れていないオレにはついて行くのがやっとで既にキョロキョロする余裕はなくなっていた。

 ったく、よくもまあ、あんな底の厚い靴で歩けるよなあ。

 しかも編み上げブーツ。アレ足むくんだら脱ぐの大変そうだよなあ、なんて思っている間にも目の前にあったはずのイッシュの背中が遠のき始めている。

 やっべ。

 とっさにイッシュの服の袖を掴むと歩調を緩めずに振り返ってきた。

「ん?」

「ごめん、人ごみ慣れてなくってさ」

「別に構わない。はぐれるよりマシだ、そのまま掴んでろ」

「うん、わりぃーな」

 遠くからキティの怒ったような声が聞こえてオレたちは急いで追いかけた。
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