vivid
「着いたよ」

 黙々と歩き続けるキティに、ひたすら着いて行った結果、気づけば街の喧騒は消えていた。街の隅っこなんだろうか。人通りは、さっき通ってきた場所とは大違いで、物凄く少ない。

 静かだな。

 景色は相変わらず黄色くて視界は明るいのに雰囲気は、なんだか暗い。

 キティの視線の先をたどると木造の建物があった。看板の文字を追うと、どうやら酒場らしいことがわかった。

「……ルーイ、」

「え、あ、なに?」

「もう離してもいいんじゃないか、手」

「え?………ああ、ごめん」

 なぜか申し訳なさそうな顔をしたイッシュに、そう言われて慌てて手を離した。

 そんな一連のやりとりを見ていたキティが笑う。

「なんだい。怖いのかい、ボウヤ」

「怖かねぇーよ!離すの忘れてただけ!」

「確かに、この場所は今通ってきた所とは違って雰囲気が暗いな」

「だーかーらっ、別に怖がっちゃいねーって!!」

「わかってる、ただ思ったことを言っただけだ」

「イエローは初めてかい?イッシュ」

「いや。でも、こんな所まで来たのは初めてだ。ここは…、」
「ブラックに近い、って?」

「……ああ」

 沈黙のあとのアイコンタクト。オレには全く意味がわからない。

 なんだよ、二人で通じ合っちゃって。やっぱオレお邪魔なんじゃね?

「まあ、どっちにしろ場所が場所だからねぇ、怖がりのボウヤは外で待っていておくれよ」

「はあ!?だから怖くねえって、」
「俺は?」

「イッシュもボウヤと待ってな。アンタも未成年だろう」

「え?そうなの?」

「………ギリギリな」

 てっきり二十代だと思っていたこのイケメンくんが、まさか自分と同じ十代だったなんて驚きだ。

 不満げな視線を向けるイッシュをキティは相手にしなかった。"イイコで待ってるんだよ、ボウヤたち"と言い残して木造の酒場へと歩いていく。
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