vivid
 ジィちゃんは下戸ってほどじゃあなかったけど酒を飲める方でもなかった。時々、町の集まりで大人連中が浴びるように酒を飲んでいたっけか。そのせいでオレは酒の匂いがダメになった。酒そのものというよりは酒臭い人間が嫌いっていうか、なんていうか。酒を飲みたいとも思わないし。

 ともかく(ビビり扱いされたのは不本意だけど)酒嫌いのオレにとって待機命令は実は結構ありがたかったりする。

 ま、いい機会、ってやつかな。

 オレは未だに隣で不満げな顔をしているイッシュに目をやった。

 イエローまでの道中では、あんまりイッシュ自体のことについては突っ込んで訊けなかった。というか訊けない雰囲気だったし。

「人捜しって言ってたけどさ、捜してんのって、どんな奴?」

「さあな」

「そ…。なあ、イッシュ」

「なんだ、ルーイ」

 名前呼び合うと、なんつーかこう改まった感じだよなあ、と思わず苦笑した。もっと、さり気なく訊くつもりだったのに。

 イッシュは、たぶん感づいてるんだろうな。

 さて、本題だ。

「突っ込んだこと訊いてもいい?」

「……前にも言ったが内容による」

「イッシュは、なんでキティと一緒にいんの?」

 "約束"と"人捜し"。

 二人の会話の中で引っかかった単語が、この二つだった。

 訊けば訊いたでイッシュは"キティとは会ったばっかで関係って呼べるもんすらない"みたいなこと言うし。会ったばっかの見ず知らずの女に、なんの目的もなくホイホイついて行くか?普通。というのがオレの意見だ。

 で、イッシュがキティにホイホイついて行ったその"目的"が"約束"の内容に繋がるんだな、たぶん。二人の口ぶりからして"約束"が果たされるのは"人捜し"が終わってから、キティが酒場から出てきたら、ってことになる。

 "約束"の内容はキティがオレに言った"詳しい話"と何かしら関係があるような気もした。


「………あの女には約束を守ってもらわなくてはならない」

 おお、やっぱ"約束"か。

「約束?」

「ああ、人捜しが終わったら俺の質問に答える、というな」

「なんだ、案外シンプルだな」

 つーか、シンプルすぎて拍子抜け。

「色々、説明してもらわなければならないことがあるんでな」

「それって、どんな内容ー?」
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