vivid
「まあまあ、そんなカッカしなさんなよ、イッシュ。腹を立てるだけ無駄だよ、何せ相手は常人じゃあないんだから」

「おいおい、酷い言い草だなあ。五年ぶりの再会だってのに」

 キティは立ち上がってスカートの裾を払うとケラケラ笑っていた。

 そんなキティの態度が気にいらないのか変人は不満げな顔をしながらイッシュを押しのけてキティの前にやって来る。

 真っ黒なコートに革の靴。服装自体は悪くないのに無精髭とボサボサの髪で台無しだ。清潔感がないっつーかなんつーか。

 で、しかも変人。第一印象、最悪。

「いつもみたく軽く飲もうと思って来てみれば、こんな貧乏くせぇ酒場の前に、お前みたいな別嬪がいるじゃねえか、まったく今日はついてるよ」

「そうかい、そりゃあよかった」

「嫌味じゃねーって、ちゃんと誉めてる。綺麗になったな、キティ」

「そりゃどうも」

「………会いたかった」

 偉そうに腕を組んで胸を張っていたキティの頬に変人の手が添えられた。

 え…………え……?え!?なに、なにこれ、どんな展開?

 なんというか見てらんなくなって、とりあえず視線をあさっての方向へ向ける。イッシュもオレと似たようなもんだった、もちろん顔は赤い。

 あんのイケメンなんつーかホンットにすーぐ顔赤くなんのな。今の場合はオレも顔赤いかもだけど。

 とは言ってもオレは思春期のガキだ。気になって気になって視線を問題の二人に戻す。

 オレたちの動揺を知ってか知らずかキティは変人の肩を軽く押して離れるように促していた。

「……アンタは髭はやすだけで随分と老けて見えるねぇ、本当は童顔のくせに。一瞬誰だかわからなかったよ」

「童顔言ってくれるなよ。気にしてんの知ってんだろ」

「本当のことを言って何が悪い?」

「……相変わらずつれないな」

「アタシだって会いたくなかったわけじゃあないさ。そうだねぇ……アンタの言葉を借りるなら、これもある種の"挨拶"だよ」

 そう言ってすぐにキティはそっぽを向いた。

 オッサンに見えないようにしたつもりなんだろうけどオレにはバッチリ見えてしまった。

 キティは笑っていた。今まで見たこともないような、それこそ本当に"女の子"みたいな顔をして。 いや、女だけど。
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