vivid
「………そうか」

 オッサンの方を見ればコッチもコッチで嬉しそうに笑っていた。

 いや、だからなんなんだよ、この空気!

「で、わざわざ俺に会いに来たってことはそれなりになんか用があるんだろ?色男にこんなガキまで引き連れて」

「とりあえず場所を変えよう。ようやくアンタとの約束が果たせそうだねぇ、イッシュ」

「人捜しは本当に、これで最後なんだろうな?」

「本当に、これで最後だよ」

 キティがイッシュの肩をポンと叩いて後ろを振り返る。

 またオッサンと二人仲良くでアイコンタクト、だ。オッサンは頷くと歩き始めたキティとイッシュに続いた。

 ガキ呼ばわりされたことには多少、腹は立つけどオレは当面の疑問を解決するためにオッサンの横に並んで話しかけた。

「なあ、あんた、もしかしてキティとイイ仲なわけ?」

 ただの好奇心だ。こんなこと訊くより、まず初めに名前を訊く方が普通だろう、と自分でも思う。

 案の定、予想外だったのかオッサンは薄く口を開いたまま、しばらく答えることはなかった。

「……マセガキ」

「うわっ」

 やっと喋ったかと思えば頭を小突かれそうになって慌てて避ける。

 避けられるとは思ってなかったらしいオッサンは一瞬、驚いたような顔をしたあとケラケラと笑った。

「いい反射神経してんなあ」

「そりゃドウモ。で?どうなの」

 このまま、はぐらかされるような気がしたから先手を打ってみた。

 オッサンはニヤリと笑いながらオレの肩に腕を乗っけてくる。

「ご期待にそえなくて申し訳ないが俺とキティは、そういった関係じゃあねえ」

 へぇ、そう。と、テキトーに返事をしようとすれば、まだ続きがあったらしく首のあたりまで回ってきていた腕に顔を寄せられた。

 む、無駄にちけぇし。つーか、ちょっと酒臭い。最悪。

「ま、そのうち、そういう仲になれりゃあいいなあ、と思ってはいるがな」

 内緒話でもするみたく小声でそう言うとオッサンは笑った。さっきみたいなニヤリとした笑い方じゃなくて、なんというかニカッて感じの人なつっこそうな笑い方だった。

 よく見ると顔は、そこそこ整っているように見えた。髭と髪が、どうにかなればキティの対応も変わってくるんじゃないかなあ、なんて思ったけど言うのはやめておいた。
< 40 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop