vivid
どうも"集められている"という気がしてならなかった。
ルーイ、リグレイと名乗った妙な男、そして俺。
はぐらかし続けてはいるがキティには何か明確な目的があるに違いない。それは、きっと一年後に起こることに関係しているのだろう。
宿の主人が厚意でだしてくれたレモネードの入ったマグカップを見つめながら溜め息を一つ。
厄介事に首を突っ込んでしまった。
それでも"約束"は守ってもらわなければならない。俺は女を一瞥した。
キティは俺たちが落ち着くのを待っているらしい、レモネードには口をつけようとしなかった。
今は、一つしかとれなかった大部屋の丸テーブルを四人で囲む、というなんとも妙な状況である。
髭面の男、リグレイはキティの"待ち"に気づいたのかマグカップから手を離した。
ルーイは、そんな空気には気づかずに音を立てながらマグカップの中身をすすっている。子どもらしいと言えば子どもらしいが。
しびれをきらしたのかキティは、とうとう口火をきった。
「ボウヤ、そろそろ真面目な話をしたいんだけどねぇ。いいかい?」
「んー?ああ、飲みながら聞いてるからテキトーに始めて。つーか真面目な話ってアレ?前に言ってた"詳しい話"?」
「そうだよ。まあ、アンタだけに関係することじゃあないんだけどね。でも順番を考えるとアンタとの"約束"を優先した方がいいのかねぇ?イッシュ」
真っ黒な指先が俺の手の中にあるマグカップの縁をなぞった。
「……ルーイの言う"詳しい話"が、あんたに集められた俺たち三人全員に関係する内容だというのなら俺個人のことは別に構わない、そっちを優先して話してくれ」
「いいのかい?」
「ああ」
「なんかワリィな、イッシュ」
そう詫びつつ早くもマグカップを空にしたルーイに返事をする代わりに、まだ口をつけていない自分の分のレモネードを差し出すと礼を言って笑った。キティの指が滑ったマグカップには、なんとなく口をつけたくなかったのだ。
「"集められた"、ねぇ?なるほど確かに適切な表現だよ」
「もったいぶってないでサッサと話せよ、キティ」
部屋に入ってから今まで口を開かなかったリグレイが始めて言葉を発した。レモネードに夢中で全く緊張感のないルーイに破顔しつつキティの目の前に置かれたマグカップを指ではじく。中身の入ったそれは動くこともなく、ただ鈍い音だけが響いた。