vivid
「そうかい?なら単刀直入に…」

 キティはテーブルに手をついて突然、立ち上がった。目には極めて真剣な色がにじんでいて流石のルーイもマグカップをテーブルに置いて手を離している。

「アタシに協力してほしい」

「………協力?」

「具体的に何すりゃいいんだ?」

 単刀直入に言われたはいいが全く具体性を伴っていない、ルーイとリグレイが疑問の声をあげるのも当然だ。

「まあ、そう焦りなさんなよ」

 頭の上にクエスチョンマークを浮かべる二人を、そう言ってあしらうと今度は俺に意味ありげな視線を寄越した。

 他人を適当にあしらったり、はぐらかしたり、からかったりすることは、この女の癖…悪癖とでも言うべきなのだろう。

 気分が悪い。まるで手のひらの上で相手の都合のいいように踊らされているかのような、そんな感覚。

 せめてもの反抗に俺はキティを睨んだ。

 が、この女が睨んだくらいで怯むはずもない。

「さぁて、何から話そうか。イッシュには少ーしだけ話したんだっけねぇ?この世界が一年後には一色に染まっちまう、っていう話」

「ああ、だからそれは具体的にどういう意味なんだ、」
「キティ、」

 俺の問いかけを遮るようにリグレイが女の名前を呼んだ。笑みは顔から消え去っている。

「"一色"ってのは、もしかしなくても、」
「"黒"だよ」

「……だろうな」

 こりゃあ参った、と天井を仰いだかと思えば目元を片手で覆っている。オーバーリアクションな男だ。

 ルーイはと言えば話の内容が全く理解できないらしく俺の方へ視線を寄越してきていた。俺は肩をすくめる他ない。

 俺が知りたいのは"世界が一色に染まる"という言葉が示す具体的な意味だ。それが解らない以上、現状、ルーイの立場と俺の立場は変わらない。

 直接聞き出すことは諦めて、キティとリグレイの話の先を待つことにした。

「するってーと、つまり……アレか?まぁた"白狩り"と似たようなことが起こっちまうかもしれねえってことだろ?」
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