vivid
「いいかい?ルールは至ってシンプル、リミットは一年だ」

「ルール…って、なんかゲームみたいな言い方だな」

 少しは落ち着いたのか座り直したルーイが俺も思っていた疑問を口にした。

「まあ、ゲームっちゃあゲームだね。これはアタシとシンアイなるコクオーヘーカとの賭だから」

「多くの人間の命がかかってるのに…っ、そんな、ゲームだなん、」
「まあ、お聞き」

 いよいよ耐えきれなくなって立ち上がりかけた俺の肩をキティは強い力を以て椅子へ押し返した。

 悪態をつこうがお構いなしに話が進められる。

「計画を阻止するためには、まず当代国王を王座から引きずり降ろす必要がある」

「コクオー…って、ブラックの…黒の国の王様を、ってことだよな?」

「そうだよ」

「王権を剥奪するだけでいいのか」

 ルーイの疑問に答えながらも未だもったいぶった話し方をするキティに問うた。

 黒以外の、赤、青、緑、そして俺やルーイのような白の者、全員の命がかかっているんだ、そんな生ぬるいことをしたくらいで計画を阻止できるとも到底、思えない。

「おや、もっと過激な言い回しの方がお好みかい?まあ、もちろん殺す気だけどね」

 ルーイの表情が固まった。

 無理もない、この女は人の"死"を口にするとき、恐ろしいくらいに感情をにじませることがない。

 対してリグレイは眉ひとつ動かすことはなかった。完全に聴く態勢に入ったのか眉どころか腕を組んだまま微動だにしない。

「とは言っても、あのヘーカとアタシが、まともにやりあったところでアタシが勝てる見込みは全くない。そこで、だ」

 女の指がマグカップの取っ手にかかる。すっかり冷めてしまったであろうレモネードを口に含んだ。

 僅かに動く喉元を見て名前通り猫舌なんだろうか、と馬鹿げたことを考える。

 それだけの余裕が、まだ俺にはあるらしい。自分でも意外だ。拳に込めていた力はもう弛んでいる。

「計画を知ったアタシに、ヘーカが直々に申し出てきた、賭けをしないか、ってね」

「じゃあ賭けるのって、もしかして…」

「命だよ、ルーイ。ヘーカの命とアタシの命、それから黒以外のカラーコードを持つ者たちの、命さ」

「随分と重い賭け金だな」

 皮肉のつもりで呟くように言うとキティはニヤリと笑った。
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