vivid
「そうさね。けど、それだけの価値が、この賭けにはある。アタシが勝てば計画を阻止できるんだから」

「そうは言っても、どうやって勝つんだ」

「ヘーカが指定してきた、ある条件を満たす。そうすればヘーカを殺す権利が与えられる。殺す権利って言っても、まあ大人しく殺されちゃあくれないだろうけどね」

「……万が一、あんたが負けた場合は、」

「リミットの一年を過ぎてもアタシがヘーカを殺すまでに至れなかった場合、そのときはアタシの負けだ。そうなったら"黒"のアタシでも容赦なく殺されるし、もちろん計画は実行される」

 俺は半ば呆れ始めていた。

 物怖じする様子も見られないからだ。自分の命がかかっているというのに、この女は。

 しかもキティ一人の命だけじゃ済まされない。キティが賭けに負ければ多くの人々が殺められてしまう。

 勝てる気でいるんだろうか。

 今までの話を聞いている分にはキティの方が不利なように思える。

 少しの間、沈黙が流れたがルーイがそれを破った。ハイ、質問!と小さく挙手をする。

「"ある条件を満たす"って言ってたけど、"ある条件"って何?」

「またいーい質問をしてくれたねぇ、ボウヤ」

 キティはルーイの髪を撫で回しながら楽しげに笑うとマグカップをテーブルの中央に置いた。

 嫌がってジタバタとするルーイをよそにまた俺に含みのある視線をよこす。

 なんとなく意図を察した俺はキティにならってマグカップをテーブルの中央に寄せた。

 続いてリグレイが、不思議そうな顔をしたルーイが、マグカップをテーブルの中央に置いていく。

「"ある条件"というのはねぇ、一年の間にこの世界を一周して、ヘーカが送ってくる刺客が提示した条件をクリアしてまわることなんだよ」

「せ、世界一周!?」

 キティにグシャグシャにされた髪が未だになおっていないルーイが驚きの声をあげた。

 今度は構う様子もなくキティはテーブルの中央に集められたマグカップを並べ替えていた。

 一つのマグカップを中心として、その円周上に他の三つが並べられた。

 その形状には思い当たるものがある。

「……トーンリング」

「察しがいいね、イッシュ」

「あ、なるほど!確かトーンリングって地図にもなるんだよな?」

「そうだよ。まあ、マグカップが四つしかないから中立地帯までは表せないけどね」
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