vivid
「いい加減、手ぇ離したらどうだい」

「えへー、スイマセン」
「気持ち悪い」

「ほんっとハッキリしてるよなぁ~、キティ姐さんは」

「今に始まったことじゃないだろう」

「さっきも本人目の前にして"嫌い"とか言うしぃ~」

「本当のことを言ったまでだよ」

「でも、そういうことスキっす!」
「サッサと本題に入りな、打つよ」

 人を強引に連れてきたわりにはズルズルとくだらない話を引き伸ばそうとするいけ好かない男に銃口を向ける。

 カチャリ、と引き金に手をかける音がしたところで漸く掴まれていた手が解放された。

 慌てたような、わざとらしい素振りにさえ、いちいち苛ついてしまう。

 でもまあ此処で銃ぶっ放したところで余計ハナシが進まなくなるだけだ、ひとまず我慢して銃をホルダーにおさめた。

「おっかねーなあ。久しぶりに会ったからちょーっと構ってほしかっただけなのに。シュリーちゃんなんて、こないだ姐さんに遊んでもらったぁ~、とか言って自慢してくるし」

「シュリーとアンタの扱いが同じわけないだろう。アタシだってシュリーは可愛いさね、アンタのことは嫌いだけど」

「うっわ、また嫌いって言った!」

「だーかーら、サッサと要件を済ませろって言ってんだよ、赤いの」

 今度はホルダーに入っている銃のうち二丁両方に手をかける。

 さすがに身の危険を感じたのか今度こそ本気で慌てているらしいリムゾンは一気にまくし立てた。

「わっ、二丁銃反対!!
……へ、陛下と姐さんの"賭け"のことなんスけど賭けてるもんって、お互いの命だけなんスか?つーか、そもそもなんでこのタイミングで?姐さんへの"誕生日プレゼント"、だなんて陛下は笑ってましたけど、なーんか不自然だなー、とか俺的には思っちゃったりしちゃったわけなんデスケド、そこんとこどうなんスか?」

「あー、ハイハイ。そんなこったろうと思ってたよ」

 グランに問い詰められなかった時点で可笑しいとは思っていた。ヘーカは自分と自分の愛猫との"賭け"の内容は話しても賭けたモノに関しては詳しく話していないらしい。通称"オオカミ計画"、その忌々しい企みについては。アタシが"賭け"に負ければアタシの命が奪われるのと同時に計画も実行されてしまう。

「赤いの、聞きたいってんなら仕方ない。ただアンタは聞いたら聞いたで後悔するかもしれないよ。それでも聞くかい?」
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