vivid
 挑発じみた問いかけに赤い男は数拍おいてニタリと笑う。それは普段のやたら軽いイメージを一掃してしまうくらいの、悪人のソレだった。

 しかし、年下の男のそんな気持ち悪い笑顔を見たところでアタシは動じない。聞きたいなら聞きたい、聞きたいなら聞きたくないで、どちらでも構わない。

 赤毛の悪人面はハハッと妙に乾いた笑い声をもらした。

「やっぱり!なーんかクセェと思ってたんスよ……話してください、キティ姐さん。是非!」

 声音だけを聞けば新しいオモチャを見つけた子どものようにも思える。

 まったく、この快楽主義者め。

 溜め息を一つこぼして"いいだろう"という一言を皮切りに説明に入ることにした。

「まずアタシが賭けてるのは自分の命だけじゃない、アタシが負ければ十年前の"白狩り"の再来、って言っても可笑しくはないことが起こる」

「って……ことはつまり?」

「"オオカミ計画"とか言うらしい。アタシが負けたら"黒"以外の人間が大量虐殺される。アタシの目的はヘーカを殺すこと、その計画を阻止することだ」

「………へぇ、そんなケーカク初耳っス」

 この戦闘狂め。

 内心そう毒づきながら舌なめずりをする男を見て顔をしかめた。アタシの顔色が変わったくらいじゃ気兼ねしないマイペースなこの男はハハッと、また笑った。

「じゃー俺も殺されちゃいますかねぇ。"黒"じゃなくて"赤"だし」

 親指で首をかっ切るような、物騒な仕草をしつつも顔と声は、やはり笑っている。

「でも、ま、おもしれぇや」

「自分が死ぬかもしれないってのにかい」

「それは姐さんだって一緒じゃないスか、負けたらどーせ死ぬんだし」

「アタシはアンタみたいに面白がったりしないよ」

 フンと鼻をならせば気にとめる様子もなく、いつの間にやら何時もの軽い調子に戻っていた。

 この態度といい、真っ赤に塗装された銃といい、本当に気に入らない。

「ところで、なんで姐さんは計画のこと知ってんスか?陛下からしたら知られちゃマズいことっスよね……あ、姐さんにバレちゃったから口止め的な感じで今回の"賭け"を持ちかけたのか、陛下は」

「まあ、そんなところさ」

 実を言うとアタシが計画を知った経緯にはリムゾンが言った以上に色々なことがあったのだが、わざわざコイツに話してやる義理もない。
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