vivid
「やっぱキティ姐さん、シュリーちゃんには甘いんだもんなあ。あ、そういやシュリーちゃんも姐さんに賭けてましたよ、何を賭け金にしたんだかはわかんないスけど」

「うるさいよ。もう用は済んだだろうに。サッサとアタシの視界から消えとくれ」

「ほら、この扱いの差!」

 尚もしつこく言い返してくる若造に、いい加減、我慢もきかなくなってホルダーに手をかけた。

 銃撃を恐れて去ろうとしたらしいが、また何か思い出したようで"あ、"と呟いている。

「キティ姐さん、」

「今度はなんだい」

「昨日は誕生日おめでとうございました」

 何かと思えば、それだけ言い残して去っていく。

 とりあえず厄介者から解放され、安堵と疲労の溜め息を一つ。

 いや、しかし明日の成人の儀ことや、これからの一年間のことを思うと溜め息一つでは済まされないような気がした。

 エントランスを入ってすぐの広間、そこに一人立ち尽くしてアタシは再度、溜め息をこぼすのだった。

「何が、おめでたいもんか」
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