vivid
「なるほどな、」

 一人で納得するオレ同様、オッサンも得心のいった様子でイッシュを見ていた。

「どうりで殺気立ってたわけだ、あの酒場の前で」

「……それは、あんたも………失礼、リグレイさんも同じだろう」

「かまわねーよ、呼び捨てで」

「え、何。なんの話?」

 イッシュとオッサンの会話に置いてけぼりをくらったオレは二人を交互に見た。

 確かに酒場前でのファーストコンタクトとは最悪だったっていうか間違いなく第一印象最悪な感じだったけど。何が"どうりで"なんだろう。

「俺たちが初めて会ったあの酒場はな、ブラックに…"黒の国"に近いんだよ」

 オレの疑問に答えてくれたのはオッサンだった。

 いつの間にかオムライスが消えた皿にスプーンが落とされた。

 食器と食器がぶつかる独特な金属音にイッシュは顔をしかめていた。少食なんだろうか、あっという間に平らげたオレやオッサンとは違ってイッシュの皿には、まだ半分ちょっとオムライスが残っていた。

「"ブラックに近い"……?って、どういう意味?」

「なんだボウズ、そんなこともわかんねぇのか」

「"そんなこと"って言ったって…」
「ルーイは幼い頃から故郷を離れたことがないらしいんだ、無理もない」

 呆れを含んだ声をだす割には嬉しそうな顔をしたオッサンに対して、オレより先にイッシュが説明をしてくれた。

 そうだな?と確認を求めてオレの方を見たイッシュの気遣いが、なんだか嬉しくて笑って頷く。

「仲いいんだな、お前ら」

 そんなオレを見ながらオッサンは笑って言った。微笑ましそうな顔、って奴だろうか。

 悪い気はしないけど、くすぐったい気持ちになって慌てて話の先を促した。

 オッサンは照れるな照れるな、なんて言ったあと急に真剣な顔になって説明を始めた。

「ブラックに近いってことは、つまるところ"危険"ってこった」

「"危険"?なんで?」

「……ちったあ自分で考えろ、って言いたいところだが…まあ、お前の場合は境遇が境遇だからな、仕方ねぇか」

「"黒"の者が"危険"だってこと?」

「そうだ。みんながみんなってわけじゃあねぇが"黒"と聞いたら、まず疑ってかかった方が賢明だな。何せ"黒"は"白狩り"の加害者だろ?その辺は、そっちの色男の方が身を以て知ってんじゃねぇのか?」
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