vivid
 "殺したい程に"

 思わず息を呑んだ。

 イッシュを見上げたものの表情に変化はない。

「簡単に殺されてやるつもりはないが、そうしたいなら別に構やあしねぇよ。
ただ、殺り合うってんなら俺が全てを話し終えたあとだ。向こう一年一緒に旅をするのに、俺がお前らにとって信頼に足る人間なのかどうか、お前らが判断するんだ。いいな?」

「わかった」

 躊躇うことなく返事をしたのはイッシュだった。

 表情を窺っても、やっぱりさっきと同じで変化はない。

 どんな話を聞いたところでオレがオッサンを殺そうだなんて思うことは、たぶんない。

 ただ反応しないことには始まらないのでとりあえず黙って頷いておいた。

 オッサンは満足げに頷いて急に表情を崩した。

 そんなオッサンを見ていたらオレまで気が抜けてしまって思わずため息が漏れた。

 オレのため息を吹き飛ばすようにオッサンは笑った。

 そんなに肩に力入れてんなよ、食いながらでいいから聞け、と。

 お言葉に甘えて、とスプーンを取るとオッサンは予め話す内容も順序も決めて暗記していたかのようにスラスラと話し始めたのだった。

 第一声は、これだった。

「俺は"白狩り"の直接的な加害者だ」
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