vivid
 つまり、こういうことだろう。

 キティは"グレイ師団の団員が提示する条件をクリアしてまわる"と言っていた。この血印はたぶん、クリアした証だ。

「まさかキティ、敵の指噛み切ったんじゃ……」

「馬鹿お言いでないよ。するわけないだろ、そんなこと」

「ですよね、スミマセン」

 プリプリ怒る間にもキティは夕食をたいらげていた。まだ食べ終わらないイッシュは"この女ならやりかねない"と言わんばかりに頷いている。リグレイは"嫌い"と言われてから本当に黙ったままだ。

「さて、アタシは帰るよ」

 リグレイが弾かれたように顔をあげた。が、"嫌い"と言われた手前、声をかけられないらしい。一瞬止まって、またドリアと格闘し始めた。やっぱりしみるのか食べるのがイッシュ以上に遅い。

 たぶん帰るなだのなんだのっていう文句だろ。

「カードはルーイに預けるよ」

「え?」

「言わなくてもわかると思うけど、」
「なくさねぇよ」

「……いい子だね」

 しっかりと両手に挟んでそう言うと、なぜかキティは一瞬だけ寂しそうな顔をした。

「いいかい、アンタたち。明日の午前中のうちには宿を発つこと!わかったね?」

「へーい」

 軽い返事をしたオレと同時にイッシュが頷いた。

「気をつけろよ、キティ」

 リグレイがようやく口を開いた。

 歩いていたキティは一度立ち止まりはしたが、振り返ることはなかった。
< 99 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop