密会は婚約指輪を外したあとで
アパートに帰った私は、部屋の明かりをつける以外、しばらく何もできずに放心状態だった。
ただ呆然と、拓馬が私にしたことを思い返す。
彼には渚さんがいて。
私には一馬さんとの繋がりがあるのに、どうして……。
──夜が明けて、明日になるのが怖かった。
綺麗にメイクされた自分は、顔を洗えば消えてしまうし。
何より、拓馬の酔いが醒めるのが怖い。
すべて、酔った勢いの言動だったのかもしれないから──。